成年後見制度について知りたい!

成年後見制度は2種類あります。一つは民法に規定されている法定後見制度です。もう一つは、任意後見契約に関する法律に規定されている任意後見制度です。これらの成年後見制度は、判断能力が不十分になったために、財産の侵害を受けたり、人としての尊厳が損なわれたりする事がないように法律面や生活面で支援する制度です。法定後見制度は、すでに判断能力が低下した人に適用されます。一方、任意後見制度は将来、判断能力が低下した時に備えて自己の生活、療養看護及び財産管理を委託するというものです。本来、判断能力が不十分な者が行なった法律行為は無効ですが、法律行為を行ったとき、判断能力が不十分であった事を証明するのは大変困難です。そこで、その者が判断能力が不十分であるということを登記しておくことによって保護しようというのが成年後見制度です。

●法定成年後見制度について!

不必要なリフォームを繰り返し行なう業者や不当に高価な物を売りつける業者などがターゲットにするのは判断能力の低下したお年寄りの方です。また、相手が必ずしも悪質ではない場合でも、判断能力が無いために不必要に高価な物を購入するといったケースもあります。このようなお年寄りに後見に当をつけることによって財産の侵害を守る事ができます。この手続は家庭裁判所で行ないます。判断能力の程度によって3種類が民法に定められています。症状の重い者から順に、後見類型、保佐類型、補助類型となっています。

○後見類型  精神上の障害により事理を弁識する能力(物事を判断する能力)を欠く状況になった者について後見開始の審判をすることができます。後見開始の審判を受けた者を成年被後見人とし、その者に保護者として法定代理人の成年後見人がつけられます。成年後見人になると本人である成年被後見人の代理権が発生します。また、本人が行なった法律行為の取消権も発生します。これによって判断能力を欠いた本人の不利益を未然に防いだり、すでに受けた不利益を取り消したりして、本人を守る事ができます。この申し立てができるのは、正気を取り戻した状態の本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などです。審判を受けると、その内容が東京法務局に登記され、善意の第三者に対しても、その事実を主張できます。申し立てにあたっては、本人の財産状況や生活状況などを調査し必要な添付書類を添えて、家庭裁判所に対して成年後見申立書を提出します。

○保佐類型  精神上の障害により物事を判断する能力が著しく不十分な者について保佐開始の審判をすることができます。成年後見を開始するのは判断能力を欠く者であり、そこまでには至っていないが著しく不十分な者が対象です。保佐開始の審判を受けると、本人は被保佐人となり、そのものの保護者として保佐人がつけられます。ここで、保佐人と後見人の権限は大きく違います。後見人には当然に代理権があります。保佐人の権限は、民法13条第1項に記載されている被保佐人の財産に重要な変動をもたらす行為に対する同意権と取消権になりますこれ以外の法律行為について、同意権や取消権あるいは代理権などが必要な場合は、本人の同意を得て別途、権限の設定をする必要があります。

     民法13条第1

*       元本を領収し、又は利用する事(預貯金の払い戻しや弁済を受領する事など)

*       借財又は保証をすること(借金をするなど)

*       不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること

*       訴訟行為をすること(原告になる事の意で、被告になる事は含まれません)

*       贈与、和解又は仲裁合意をすること

*       相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること(相続の承認が含まれるのは相続財産がマイナスの可能性も有るため)

*       贈与のお申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し又は負担付遺贈を承認すること

*       新築、改築、増築又は大修繕をすること

*       602条に定める期間を超える賃貸借をすること(土地5年、建物3年など)

○補助類型  精神上の障害により物事を判断する能力が不十分なものについて補助開始の審判をすることができます。保佐類型よりさらに程度が軽い者で、判断能力の欠ける程度が少ない場合である方、本人の意思はできるだけ尊重する事が望ましい。そこで、申し立ては本人自ら行なうか、そうでない場合は本人の同意が必要とされています。補助開始の審判を受けると、本人は被補助者となり、保護者として補助人がつけられます。補助者には当然に与えられる権限は何もありません。本人の意向あるいは同意を得て、上記の民法13条第1項の中から数項目を指定して、同意権、取消権あるいは代理権などを設定する事になります。

●任意後見制度について!

法定成年後見制度がすでに認知症(痴呆とか呆けとか呼ばれていましたが今は認知症と呼んでいます)や知的障害になったものを対象にしているのに対して、任意後見制度は判断能力が十分に有るものを対象としています。自分が認知症になった後の事を不安に思っている方は多いと思います。1人暮らしのお年寄りにしてみればその不安はさらに強いでしょう。自分が認知症になった後、療養介護の手配や入院費の支払いや各種の支払いなど、誰に頼めばいいのか分からない。このような将来の不安に備える仕組みとして任意後見制度が用意されました。そしてこの制度は、これからの日本社会に必要であり、大いに活用していきたい仕組みだと思われます。では、具体的にどのような制度なのでしょう?これは、本人と将来の任意後見人(これを任意後見受任者と呼びます)との契約によって本人の希望を実現させるというものです。まず、本人が自分が認知症になった後、どのような生活をしたいかを考えます。特定の身内に面倒を見てもらいたい。またそれが可能である。それは期待できそうに無い。あるいは老人ホームなどの施設で生活したい又はそうせざるを得ない。今、自分にはどれだけの財産があるのか?この先の収入はどれくらい有るのか?年金だけしかないのか、あるいは、アパート収入などが有るとか、その人のおかれた状況は様々です。それらの事を十分検討したうえで、自分の判断能力が不十分になった後の生活、財産管理、療養看護に関する事務について、あらかじめ代理権を付与する契約を結び、その契約書を公正証書にして、東京法務局に登記しておくという制度です。この時、任意後見受任者を選ぶ事になります。受任者に特に資格は必要ありませんが、受任者選びは慎重に行なう必要があります。何といっても、自分の生活がかかっている上に財産管理などの代理権を付与する契約です。任意後見監督人という不正防止の仕組みが有るとはいえ、完全には、その可能性は否定できないのです。ところで、任意後見契約を結べば、すぐに効力が発生するかというとそうでは有りません。登記はされますが、効力が発生するのは、本人が認知症や脳梗塞などにより、判断力が低下した後です。これには医師の診断書が要ります。この状態になった段階で、任意後見受任者は家庭裁判所に任意後見監督人選任申立書を申請します。任意後見監督人が選任されると、任意後見受任者は任意後見人となり、あらかじめ結んである任意後見契約に内容を本人のために実現していきます。後見人の職務は、財産管理事務、身上監護事務、家庭裁判所への報告事務の三つです。就任したら、1ヶ月以内に財産目録や生活プランの作成をして届け出ます。その後も、必要に応じてあるいは任意後見監督人や家庭裁判所の求めに応じて、報告していくことになります。ここで注意したいのは、本人と後見人の財産は、きっちり区別して管理する事です。特に家族方が後見人の場合は混同してしまいがちですが、これは後見人不適格ということで、家庭裁判所から解任されるおそれがあります。この任後見契約は、本人の判断力が不十分になり任意後見監督人が選任されたときから、本人の死亡までが有効な契約です。これだけでは十分ではないため、通常、付随した契約も同時に結ぶ事が多いようです。任意後見契約は、本人の死亡で契約解除になりますので入院費や施設入所費など死亡後にするべき事務の代理権がありません。そこで、これを可能にするため、死後の事務委任契約というものを同時に結んでおくと良いでしょう。また、任意後見契約を登記してから効力発生までには期間があります。誰にも自分がいつ呆けるかなど分かりません。そこで、見守り契約というものを結ぶケースも有ります。これは特に、任意後見受任者を身内以外から選んだ場合などに利用されます。定期的に連絡を取ったり相談を受けたりといったものですが、定期的な交流によって、任意後見人にとっては契約発生後に本人のために何をすればいいのかの参考になりますし、本人にとっても適切な時期に任意後見契約の効力を生じさせてもらえる事が期待できます。

 

 

 


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